消費税の基本とインボイス制度

税金のお話
※インボイス制度の手続きに関する記事はこちら!※
インボイス制度の手続き



▶ 目次

1. 消費税の仕組み

2. 納税義務者判定シミュレーション

3. 簡易課税制度

4. 原則・簡易 有利判定シミュレーション

5. インボイス制度に向けて

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蒸し暑い夏も終わりでしょうか。秋の気配がしてまいりました。
以前から話題にはなっていた消費税のインボイス制度、その導入に向けて適格請求書発行事業者登録番号の申請が令和3年10月1日より可能となります。

ということで、

今回のテーマは「消費税の基本とインボイス制度」です!

1. 消費税の仕組み


ご存じの通り「消費税」は税金の中でも生活に密接に関わる税金です。皆さんも日々お支払いしていることでしょう。

一方で、消費税を国に「直接」納付したことがある方というのは限られてくるものと思われます。納付した経験がなければ、「買い物をしたお店に消費税を納めている」という感覚の方も少なくないのではないでしょうか。

当たり前といえば当たり前のことなのですが、消費税は国に納めるべき税金のひとつであり、お店に納めるものではありません。しかしながら、実際に支払っている相手は買い物をしたお店です。

この矛盾の答えは、消費税の仕組みにあります。

下図をご覧ください。

青色が支払った金額、赤色が受け取った金額です。消費税額は、それらに税率(以降、本記事では仮に10%とする。)を乗じて計算しています。緑色が支払った消費税、黄色が受け取った消費税です。両者の差額が、国に納付される消費税額になります。


消費税の仕組みです。消費税は、担税者(消費者)から預かるお金を、納税義務者が代わりに国に納付するという構造になっています。



上の図をみていただければ分かる通り、
消費税は「担税者(実際に税金を負担する人)」と「納税義務者(税金を国に納める人)」が異なります。

実際に消費税を支払っているといえるのは「担税者」とされる消費者Dであり、他の3者は「納税義務者」として、本来は消費者Dがすべき納付手続きを代わりに行っているというイメージです。

消費者は不特定多数の者ですから、国がそれを「どこの誰がいくら買い物をしていくらの税金を払うべきで・・・」と把握し徴収するのは困難なので、代替的に、特定しやすい事業者から徴収しているということです。

一般的には、事業者が消費者の代わり支払った消費税を「仮払消費税」、受け取った消費税を「仮受消費税」と呼びます。

決算時にこれらを精算し、受け取りすぎた消費税額(=消費者が納めるべき消費税額)を事業者が国に納付、あるいは払いすぎた消費税額を還付請求することになります。

以上が消費税納付までの一連の流れとなりますが、中には「うちも商売をしていて税理士さんにもお願いしているけど、消費税を納付したことないよ」という方もいらっしゃると思います。

このような方々は「免税事業者」に該当しているため、消費税を納付しなくてもいいことになっています。

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2. 納税義務者判定シミュレーション


消費税の「免税事業者」に該当するかどうかを判定できるシミュレーションを作ってみました。

消費税率はすべて10%と仮定しています。水色の入力欄に適当な金額を入力し判定ボタンを押していただければ、判定結果が出てくる仕組みです。

なお、本シミュレーションはあくまで制度解説用の参考値となりますので、詳しく気になる方はお近くの税理士にご相談ください。


過去の納税義務

① 前々事業年度      

② 前事業年度         

税込売上高(不・非課税売上分を除く)

① 前々事業年度
② 前事業年度開始後6か月間



納税義務判定
簡易課税制度



判定結果が出ましたでしょうか。

本シミュレーションでは、以下の算式に基づいて判定を行っております。


下記2つの条件のいずれかに当てはまる場合には「課税事業者」となり、消費税の納税義務が発生します。

(1) > 1千万円
「基準期間における課税売上高」とは、原則として、個人事業者の場合は前々年の課税売上高、法人の場合は前々事業年度の課税売上高を指す

(2)特定期間における課税売上高 > 1千万円
「特定期間における課税売上高」とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間の課税売上高、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間の課税売上高を指す


ほとんどの法人・個人事業者はこの方法により判定可能ですが、「特定期間における給与等支払額」や「新設法人・特定新規設立法人の特例」などその他様々な基準が絡むこともあります。詳細が気になる方は、下記の国税庁HPをご確認ください。

国税庁公式HP/タックスアンサー/消費税/No.6501 納税義務の免除

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3. 簡易課税制度


また、本シミュレーションでは「簡易課税制度」の適用可否も判定結果に出るようになっています。

「簡易課税制度」とは、消費税を原則通りに計算することが煩雑であることから、中小事業者の実務上の負担を少しでも減らすために作られた制度です。

例外もありますが、先ほど納税義務判定にも用いた「基準期間における課税売上高」が5千万円以下の事業者が、税務署に「簡易課税制度選択届出書」を出すことで受けることができます。免税事業者であっても追加で「課税事業者選択届出書」を出すことで利用できます。


仕入税額控除の説明です。仮受消費税から仮払消費税をひく計算構造のことを、仕入税額控除と呼びます。


前述の通り消費税は担税者と納税義務者が異なるため、納付消費税は「仮受消費税」から「仮払消費税」を差し引くことで計算します。

これを「仕入税額控除」と呼びます。赤丸で囲まれた部分です。

簡易課税制度によれば、この「仕入税額」を原則計算とは違う算式を用いて簡易的に計算することができます。

原則であれば仮払消費税を取引ごとに把握し仕入税額を計算する必要があるのですが、

簡易課税制度の適用を受ける事業者は、仕入税額控除の対象となる金額の合計額に「みなし仕入率」と呼ばれる一定の割合および消費税率を乗じることで、一括して「仕入税額」を計算します。


原則計算と簡易課税制度による計算との、納税額の比較です。同じ金額で取引を行っていても、業種により納税額が変化するのが簡易課税制度です。


ここで納付税額を着目しますと、原則の計算と簡易課税制度の計算とで違う結果が出ているのが分かると思います。

簡易課税制度による計算は実際の金額ではなく、売上高に「みなし仕入率」を乗じた仮の金額を用いて行うため、本来の納付税額より高くなったり安くなったりするのです。

なお、みなし仕入率は以下のように定められています。

簡易課税制度の業種区分です。業種を1種から6種に分け、それぞれに90%から40%のみなし仕入れ率を割り当てています。

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4. 原則・簡易 有利判定シミュレーション


原則と簡易課税制度との有利判定シミュレーションを作ってみました。

消費税率はすべて10%と仮定しています。水色の入力欄に適当な金額を入力し判定ボタンを押していただければ、判定結果が出てくる仕組みです。



事業区分  


税込売上高(不・非課税売上分を除く)
税込経費(不・非課税経費分を除く)



原則計算による税額
簡易課税制度による税額

判定結果が出ましたでしょうか。

「実際の原価率」と「みなし仕入率」が乖離すればするほど、両者の税額の差が大きくなります。

免税事業者も課税事業者も一定の条件下で簡易課税制度を選択すると、消費税が安くすむことがあるというのは覚えておいて損はないと思います。

業種区分が複数にわたる場合は「みなし仕入率」の計算方法がもう少し複雑なものになります。
手続き方法などと合わせて、簡易課税制度についてもっと知りたいという方は下記の国税庁HPをご確認ください。

国税庁公式HP/タックスアンサー/消費税/No.6505 簡易課税制度

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5. インボイス制度に向けて


最後に、「インボイス制度」についてみていきます。

「インボイス制度」とは、ざっくり言いますと、先ほど説明した仕入税額控除の要件に「適格請求書の保存」を加えるというものです。

令和5年10月から導入予定であり、この「適格請求書」を発行できる「適格請求書発行事業者」になるための登録申請が令和3年10月1日から可能となります。

そしてこの「適格請求書発行事業者」には、免税事業者はなることができません!

つまり、現在免税事業者と取引を行っている事業者の消費税計算について、インボイス制度が開始するとその免税事業者に支払った金額は仕入税額控除の対象とならない、言い換えると、「仮払消費税」として「仮受消費税」から控除することができないということです。

もちろん、登録申請をせず「適格請求書発行事業者」になっていない課税事業者に支払った金額も、仕入税額控除の対象とはなりません。

なぜこのような制度が導入されることになったのかといいますと、原因は消費税の現在の計算構造にあります。

インボイス制度の必要性を示す表です。免税事業者の存在により発生していた益税をなくすために導入されることとなりました。


上図は、卸売業者Bが免税事業者である場合の消費税の流れになります。

免税事業者は「仮払消費税」「仮受消費税」「納付消費税」が0円なので、卸売業者Bが課税事業者だったならば、消費者Dが支払ったはずの納付消費税50円分が徴収不能となってしまっています。

一方でインボイス制度が開始すると、免税事業者である卸売業者Bから仕入れた小売業者Cの「仮払消費税」は0円になり、国は、徴収不能となっていた50円を徴収することができるようになります。いわゆる「益税を排除できる」というわけです。

インボイス制度の概要・登録申請方法については、下記国税庁HPの特設ページで確認できます。説明用の動画やオンライン説明会の案内などもありますので、課税事業者の方はもちろん、免税事業者の方も目を通してみるといいと思います。

国税庁公式HP/特集インボイス制度

課税事業者の方は、インボイス制度の導入時点で「適格請求書発行事業者」の登録が済んでいるように今から準備を行いましょう。

免税事業者の方ですと「適格請求書発行事業者」になれないことで、普段の取引に影響が出てくる場合もあると思います。

選択肢のひとつとして、「課税事業者選択届出書」を提出して消費税の課税事業者になった上で「適格請求書発行事業者」の登録申請行うという方法があります。

しかし課税事業者を選択するということは消費税の計算・納付が必要になるということで、それらに係る実務負担に経営が圧迫されるおそれもあります。

インボイス制度の導入は免税事業者の方にとって苦しい選択を迫るものになるとは思いますが、制度導入に向けてのご準備をお願いいたします。

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いかがでしたでしょうか。
本日は、消費税について書かせていただきました。

記事では触れていない細かい部分など、消費税についての詳細はこちらで確認できます。

国税庁公式HP/タックスアンサー/消費税

気になる方はぜひ調べてみてください!


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